音楽の力
詩人の谷川俊太郎さんが92歳で逝去されたニュースが流れ、主な作品の中に「鉄腕アトム」の歌詞があったことにびっくりしました。間髪入れずに歌が口を突いて出た私は、またびっくり。一番だけだけど、すらすらと歌えたんです。
小学生の頃に聞いた歌詞は、脳内にしっかり刻まれていました。
数年前にも、歌詞の力に驚かされたことがあります。
「お江戸日本橋七つ立ち…」に続く歌詞が、すっと出たことで、これも一番だけでしたが、日本橋を「明け七つ」に出発して、高輪で夜が明け提灯を消す、という経過が分るのです。
ちなみに「明け七つ」というのは、現在では春分の頃だと午前3時半頃のことのよう。東京で同時期の夜明けは5時45分だそうだから、日本橋から高輪まで、徒歩で2時間15分ほどだったことになります。
そんなことも歌詞から読み取れるのです。
二番以降になると各地の名物なども盛り込まれます。
検索した歌詞には、「恋の品川 女郎衆に 袖ひかれ」「六郷渡れば川崎の万年屋 鶴と亀との よね饅頭」「登る箱根のお関所で…新道じゃないかと ちょと三島」…当時の東海道の様子や名物も分かります。
歌詞ってすごい、と感動したことを思い出しました。
酒蔵では「酒造り唄」というのがあると見聞きしたことがあります。揃って歌うことで全員が調子を合わせ、時間も計れるというのです。こちらの方はリズムの効用。
かつて職場で救急救命の処置訓練を経験したことがありました。
心肺蘇生をする時に、一定のリズムで約30回胸を押し、その後に口から空気を入れ(口移しで人工呼吸)、それを繰り返す。これって、30回数えるのとリズムを取るのが大変そうだなと思いました。
でも、これにも歌があれば楽だと、当時調べた時に知りました。「もしもし亀よ」が、リズムも長さもぴったりだそう。拍数を取ってみると、一番は32拍になりました。
心肺蘇生という深刻な事態で歌っている場合ではないですが、心の中で歌うのは自由だし、きわめて有効だと思いました。これも音楽の力かな。
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